目のかけら
2007-09-17T16:37:53+09:00
nonoko-a
「言葉を写す」
Excite Blog
【2006/02~2006/09】
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2007-09-17T16:36:00+09:00
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Vol.2 [06/02~06/09]
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悔やむ、隙間にて
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2006-09-02T01:05:00+09:00
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nonoko-a
Vol.2 [06/02~06/09]
とてもかなしいことがあった。
あまりにもかなしすぎてうごけなくなって
でんしゃからおりられなくなるほど。
「しかたがない」
「しかたがないね」
「どうしようもない」
「どうしようもないね」
ちかしいひとと、そういいあった。
いいあったけど、やっぱりかなしくてなみだがでた。
でもいちばんつらいのは、あたしじゃないから、
だまってみまもる。
あいたかったよ。
あれがさいしょでさいごだなんて。]]>
いるあいだ
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2006-06-04T23:22:00+09:00
2006-06-04T23:24:44+09:00
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Vol.2 [06/02~06/09]
夕方、くたびれた古い袋を引きずる彼に、ヨォと声をかけられる。
「セ、伸びたな」と、彼、笑う。
笑うと見える欠けた前歯は、今もそのまま。
彼の持つ袋の底には穴があいていて、ネジみたいな部品がぽろぽろこぼれて落ちる。
転がったひとつを拾いあげると、
「イラナイ、イラナイ」
彼は何度も首を振る。迷いのない顔つきで、もうイラナイんだ、と。
取り壊された家のこと、やめてしまった癖のこと、道のあちらとこちらにいた人のこと、
それから、今は浮かび上がって暮らす人たちのこと。
どうしようもなく頭にこびりついて離れない話をする私に
彼は、ただうんうんと頷いてくれた。
忘れたいと祈っても、取り残される役回りは、いつも私たち。
救いなんて求めようがないんだってわかっているのも、私たち。]]>
衝動の域を出る
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2006-04-26T21:23:33+09:00
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Vol.2 [06/02~06/09]
何もかも切り取って捨てたはずだったのに。
残っていた断片を手にして途方に暮れていたら、
大きな声で咎めてくれる人が、ひとりだけいた。
「早く捨ててしまいなさい」
「そんなカンタンなことくらい、わかるでしょうに」
「昨日も今日もフイになりますよ」
「それでもいいのなら、持っていなさい」
首を振って、丹念に粉々にちぎって放り投げた。
その間、その人は、知らん振りして鼻歌を歌っているだけの人。
遠くに散っていくのを見ていたら、気もすっかり晴れる。]]>
号笛を聞く
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2006-04-17T22:22:19+09:00
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Vol.2 [06/02~06/09]
同じ速さで歩く人たちが前に2人いて、追い抜くことも距離を縮めることもできずに、ただその後を続く時間が長過ぎた。
どこかで曲がってくれないかなあと願っても、あたしが行きたい道へ、先へ、揃って進んでいくんだもの。冷たい汗が出た。息も切れる。でもその人たち、競ってなんかいないし、ただふわりふわりのびやかに歩いているだけなのだ。悔しくて、逸れることができなかった。
そろそろ、だめ。
次の三叉路で引き返そうと決めた時、先にそこにたどり着いた1人、あたしを振り返って、「もうこれからはこだわるんじゃないよ」と、屈託のない笑顔で言って、道からはずれた。
そして、その次の1人も同じようにこちらに笑いかけて、消えた。
そういうわけで、その2人が選ばなかった道を行くことにした。
引き返さなかったことは、今でも良かったと思っている。
あたしが選んだのは、あの2人が残した行き先に過ぎないけれど。]]>
逆巻く
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2006-04-09T22:43:00+09:00
2006-04-09T22:45:51+09:00
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Vol.2 [06/02~06/09]
ようやく会えても目は合わせない。
彼女とは、そういう間柄。
特別なことを話しても、カラカラ笑ってしまう。
あんた馬鹿じゃないのと罵りあって、腹だって立てる。
でも、別れる時になると寂しくて、またねまたねと何度も繰り返しながら離れる。
本当のこと言えなくてごめんねと、いつも思うのに。
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ひら、はらり
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2006-03-21T21:51:32+09:00
2006-03-21T21:55:40+09:00
2006-03-21T21:51:32+09:00
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Vol.2 [06/02~06/09]
「よくわかんないんだよ」
頭を抱えてモウさんが言うので、私もだんだんわからなくなっていく。
「でも、ぼやけたままのほうがいいこともあるよ」
空回りを断ち切りたくてそう返してみたけれど、モウさんは、うん、と言っただけ。
やっぱり力にはなれないのだなと思ったら、少し悲しかった。
でも、そんなものだという諦めの気持ちも、確実にあった。
じっとしていたら、どこからか砂粒が飛んできて肩に積もる。
目には見えないのに、触るとざらり、砂だ。お互いにそれを払いあった。
するとモウさん、調子が戻ったのか、山はもう遠くて花がすぐそばにあるとかなんとか、
歌うように言ってくれて、私、嬉しかった。
今、手のひらに小さな傷がひとつあって、痛む。
モウさんの肩の砂を払った時のものだ。
モウさんは平気だったかなあと思いながら、手を洗っている。]]>
行き止まって、安堵
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2006-03-15T21:16:35+09:00
2006-03-15T21:16:36+09:00
2006-03-15T21:16:36+09:00
nonoko-a
Vol.2 [06/02~06/09]
月が出ているので嘘をつかないようにと言われて、その人を目の前にしたまま、私、まごまごしていた。
昔よく、月と私たち、どっちが先にいなくなるか?って話をした。
「そりゃあ、私たち」
迷わずに答えられた。
「無論」
その人も言った。
「もし月がなくなったら、僕ら、すぐにいなくなる」
「でも月がなくなって少しの間、私たち、いる」
「そんなの意味ない差だね」
お互いに屁理屈を並べて、話はいつまでも終らなかったのに、いまはもう駄目。
(いつの間に、こんなに素直で透けた心になったのだろう、その人)
黙って考えた末に気がついた。
本当のことが言えないんじゃなくて、言うことがないの。
その人のこと、もう好きじゃないの。
だから安心してね。
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底に逃げる
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2006-03-05T20:48:33+09:00
2006-03-05T22:11:45+09:00
2006-03-05T20:48:33+09:00
nonoko-a
Vol.2 [06/02~06/09]
近づくと、また真っ暗だ。
ここ辺りの灯り、いつも簡単に消えるのだ。
でも誰も文句なんて言わない。
よろけながら、あちこちにぶつかりながら、必死に住処を探してみんな歩く。
何も見えないから、たまに互いに近寄りすぎて、肩が触れることもある。そういう時は、どうもどうもと謝りながら、また行く。
ある時、鈴をつけていればぶつからないかもしれませんよと言った人がいて、銀の小さな鈴が配られ、みんなしてちりんちりん音を響かせていたこともあった。でもしばらくして、ちりんちりん、音があってもなくても、誰かがつまづくのにはかわりないということがわかって、元通り。
空、赤く明るくなりかけている。
暗い間に家までたどり着けなかった人たちは、それぞれ確かな道に散らばりながら、ただ待っていればいいのかもしれないなと、毎度思う。それから、顔ぶれがいつも同じだな、とも。
私もそのひとりだ。]]>
無いことに懲りる
http://menokakera.exblog.jp/4178226/
2006-02-20T21:34:39+09:00
2006-02-20T21:42:07+09:00
2006-02-20T21:34:39+09:00
nonoko-a
Vol.2 [06/02~06/09]
行き先を忘れた。
しかも、点滅する黄色の信号が、いつまでも私とルちゃんを渡らせない。
ルちゃんと私、どんどん心細くなっていく。
二人してその場足踏みをしながら、タイミングをはかった。
「ここからは無理だよ」
後からやって来たお姉さんが私たちに言った。柔らかい声だったけれど、棘があった。
顔を見ると、優しく垂れたその目にも、棘。
「どうしてよ?」
ルちゃんが言った。
「アタシにもよくわからないけど、とにかくここは渡れないの」
お姉さんは、私たちの立つ場所から一丁先の、信号のない角を指差してくれる。
ルちゃんが「ありがとよ」と、船乗りのおじさんみたいな口調で答えると、お姉さんのあちこちから出ていた棘の先が、ほんのちょっとだけ丸くなったように思えた。
お姉さんに言われたとおりにその角に立つと、行き先はすぐに見えた。
見上げようとすると、くらくらするくらい高いビルだ。
「こんなところが?」
ルちゃんと私は顔を見合わせる。
絶対に違うと思いたかったけれど、ここに間違いなかった。
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またたく
http://menokakera.exblog.jp/4146826/
2006-02-12T21:43:12+09:00
2006-02-12T21:44:51+09:00
2006-02-12T21:43:12+09:00
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Vol.2 [06/02~06/09]
「ぴょんぴょんはねてあるいたころのことなんて、わすれちゃったよ」
こんなに見晴らしの良い場所に立っているのに、
なんて希望のないことを言う人なんだろうと思って、私、黙る。
でも、
「すべてが、できすぎている」
「つめたいみちも、ぜんぶ」
あの人から放たれる言葉が、すっきりとかたづいているのが気になった。
そうだ。長いことドコダカという遠い国に行っていたんだもの。
そう思い直して、あの人が大切にしていた相手を
わざと置き去りにした場所を探してあげようと目をこらしたけれど、
時間には間に合いそうもなくて、また私、黙ったら、
あの人、少し甲高い声で笑った。]]>
【2004/10~2005/10】
http://menokakera.exblog.jp/3732769/
2005-11-06T15:14:24+09:00
2006-01-29T23:26:33+09:00
2005-11-06T15:12:50+09:00
nonoko-a
Vol.1 [04/10~05/10]
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望み叶って
http://menokakera.exblog.jp/3594918/
2005-10-09T13:36:55+09:00
2006-01-29T23:26:33+09:00
2005-10-09T13:35:52+09:00
nonoko-a
Vol.1 [04/10~05/10]
輪の中、退屈だったな。
でも残りの日、湿る空気の重さを感じなくなれたのは、マァちゃんのおかげ。
「みんな同じだね」
マァちゃんが初めて発した言葉は、皆をぎくりとさせるものだった。
いっせいに目線が集まる。
中でも、外からの匂いをかぎつけると必ず輪の真ん中に入り込んで来る女の人のが、
誰よりも早くマァちゃんに届いた。
あたし、隣で慌てふためいた。
(染まりかけていたんだ)
でも、マァちゃんは眼鏡を外して、あれ?曇って見えないや、と呟いただけ。
輪の輪郭は、それであっけなく歪んだ。
次にマァちゃんが来る頃には、あたしはいない。
最初からマァちゃんがいてくれたら、と思いながら、崩れかけた輪を抜ける。
マァちゃんにはまた会いたい。]]>
次の間際
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2005-10-01T14:12:57+09:00
2006-01-29T23:26:33+09:00
2005-10-01T14:12:54+09:00
nonoko-a
Vol.1 [04/10~05/10]
砂に倒れて空を見ると、どこまでも乾いて透明な青さ。
やがて潮が満ちればこの砂粒は方々へと流れ、あたしは溺れる。
<浅い海の底に沈めば耳元でさらり音がする>
そう教えてくれた人、いつもいちいちこちらのことを気にかけてくれていた。
でも今ではあたしのほうが強く案じている、きっと。
爪先から少しずつ洗われはじめる。
ひとつ波が引くたびに、息を吐いて大きく吸って止めて次を待った。
そろそろくる頃かなと思った途端、一気に押し寄せる強さに飲み込まれた。
怖くはなかった。
つまり、音はちゃんと聞こえたということだ。]]>
敵前逃亡
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2005-09-19T14:12:45+09:00
2006-01-29T23:26:33+09:00
2005-09-19T14:12:47+09:00
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Vol.1 [04/10~05/10]
月夜。
なかなか減らない飴を舐めていたら案の定、ボウダさんのことを思い出す。
ボウダさんは、いつもどこか遠くの国で作られたお菓子を鞄に入れていて、待ち合わせた場所に行くと、挨拶よりもまず先にそれらを差し出した。
乾燥させた果物だったりざらざらした舌触りの得体の知れない何かだったり大きなボウロのようなものだったり、種類はいろいろ。だけど、変に甘くて派手な色をしたものばかりで、おいしいと言えるものはまったくない。
あたしが無言のままひとつを懸命に噛み砕いている間に、ボウダさんはみっつもよっつも自分の口に放り入れ、これはどこそこのあれなのよ、と、解説してくれる。でも、あまりにも不味くて、説明を聞き遂げられたことはなかった。
ある晩、あたしの顔を見た途端にボウダさん、しまった、という表情をした。
「どうしたんですか?」
「忘れちゃったわ」
持っていた手提げを何度かき回しても、お菓子は欠片も出てこない。
大げさに残念そうな顔をして、また今度持ってきて下さいよ、と言うと、
ボウダさんは目を吊り上げて、今日のは特別だったの!と叫び、そのまま帰ってしまった。
胃も心も爽快になったあたしは、ボウダさんを追いかけようともしなかった。
以来、ボウダさんからの連絡は途絶えている。
今も舌に残る記憶を考えると、会いたいとは思わない。
でも、もし顔を合わせた時、その<特別なお菓子>を勧められたら、
またひとつ食べてしまうかもしれない。]]>
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